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海外子会社との役務提供費が調査で問題になる理由

  • 岸本 真
  • 6月29日
  • 読了時間: 4分

海外子会社との役務提供費が税務調査で問題になる理由

— 調査官の視点から解説

カテゴリ: 移転価格 | 著者: 岸本 真(税理士・元国税局国際税務専門官)| 公開日: 2026年6月29日


海外子会社に対してコンサルティング・経営指導・ITシステムの提供などを行っている企業は多いですが、その「対価の設定」が税務調査で問題になるケースは非常に多いです。なぜ問題になるのか、どうすれば対策できるのかを解説します。


1. 役務提供取引とは何か

海外子会社との「役務提供取引」とは、親会社(日本法人)が子会社に対して提供するサービスに対して対価を受け取る取引のことです。具体的には以下のようなものが含まれます。


✅経営管理・コンサルティングサービス

✅ITシステム・基幹システムの提供・保守

✅マーケティング・ブランド使用の支援

✅人材育成・研修サービス

✅法務・財務・人事などのシェアードサービス


これらは「グループ内役務提供」と呼ばれ、移転価格税制の対象となります。


2. なぜ調査で問題になるのか

調査官が役務提供取引を問題にする主な理由は3つあります。

第一に「対価が設定されていない」ケースです。親会社が子会社に対してサービスを提供しているにもかかわらず、無償または著しく低い対価で行っている場合、日本の課税所得が圧縮されているとみなされ、寄附金として認定されるリスクがあります。

第二に「対価の根拠が不明確」なケースです。対価は設定しているが、どのように算出したかの根拠がない場合、調査官から「独立企業間価格と乖離しているのではないか」と指摘されます。

第三に「サービスの実態が証明できない」ケースです。実際にサービスが提供されたことを示す資料(業務記録・メール・報告書など)がないと、「対価を受け取る根拠がない」と判断されます。


特に問題になりやすいのが「管理費の配賦」です。本社コストを一括して子会社に配賦している場合、その根拠・計算方法・受益者テストの有無が必ず確認されます。


3. 具体的な調査の流れ

調査官が役務提供取引を調べる場合、おおむね以下の順序で確認します。


✅勘定科目内訳書・国外関連者との取引明細で役務提供取引の有無を確認

✅契約書・基本合意書の有無と内容を確認

✅サービスが実際に提供されたことを示す業務記録・成果物を確認

✅対価の算定方法(原価基準法・利益分割法など)と根拠を確認

✅子会社側がそのサービスから受益しているかどうかを確認(受益者テスト)


よくある指摘の例

「この管理費配賦は何を根拠に算出していますか?子会社がこのサービスから具体的にどのような便益を受けているか説明できますか?」


4. 対策として準備しておくべきこと

調査に備えて、以下の点を整備しておくことをお勧めします。


✅役務提供に関する契約書または基本合意書の整備

✅実際に提供したサービスの業務記録・報告書・メールの保存

✅対価の算定方法と根拠の文書化(簡易なものでも有効)

✅受益者テスト(子会社がそのサービスから便益を受けているかの確認)の実施


移転価格文書化の義務対象でない中小規模の企業でも、これらの資料を準備しておくだけで調査対応が大きく変わります。


5. まとめ

海外子会社との役務提供取引は、金額の大小にかかわらず調査官が注目するポイントです。「サービスを提供している」「対価をもらっている」だけでは不十分で、その根拠・実態・算定方法が問われます。

現状の取引内容に不安がある方、文書化ができていない方は、一度専門家に現状診断を受けることをお勧めします。


移転価格・役務提供取引に関するご相談は初回無料です。現状の取引が問題ないかどうかの確認だけでもお気軽にどうぞ。


【著者プロフィール】

岸本 真(税理士・プライベートバンカー)

国税局において国際調査部門(調査官)・移転価格事前確認審査(国際情報審理官)・外国法人部門(総括主査)等を歴任。令和5年に退官し岸本真税理士事務所を開業。国税局OB税理士が12名連携して国際税務のワンストップサービスを提供する「国際税務アライアンスLLP」主宰。移転価格データベース(ムーディース®)を保有し、ベンチマークサービスも適正価格で提供中。

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